学びと交流を深める!『第42回八重洲塾』開催レポート
テーマは「SDGs:つくる責任 つかう責任」
「素敵な未来農林水産業への、架け橋」を目指す、株式会社アグリインキュベーターが主催する「八重洲塾」では、SDGsの問題解決について最先端で活躍する方々を講師に招き、新しい時代の姿を模索しています。
SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」では、2030年までに小売や消費レベルで、世界全体の1人当たりの食料廃棄を半減させ、生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させることが掲げられています。42回目となる今回は、コープデリ生活協同組合連合会常務理事の山内明子氏をお迎えし、「生活協同組合における食品ロス削減の取り組み」についてご講演いただきました。
山内明子氏 :「生活協同組合における食品ロス削減の取り組み」
山内氏はまず、生活協同組合(Consumers Co-operative、略称「CO-OP」、以下「生協」または「コープ」)の歴史と日本におけるコープの概要について解説しました。
「イギリスのマンチェスター近郊で発足した、ロッチデール公正開拓者組合が世界で初めて成功した生活協同組合だと言われており、産業革命の時代に労働者が自分たちで仕入れをし、暮らしを改善する目的で作られたものです。この時に1人一票による民主的な運営や取引高に応じた剰余金の分配という、私たちの現代の生協の考え方の基礎になるものが作られました。この後、欧州に生活協同組合の仕組みが広がり、これが後々日本に伝わりました」
「生協が日本でできたのは1879年(中略)戦後になると食料配給のために生活協同組合に大きな役割を果たしてほしいという期待もあり、全国でたくさんの生協が作られました。1960年代頃から少しずつ大きくなり、より良い商品を求めてコープ商品が作られるようになりました。(中略)現在、日本生活協同組合連合会加盟の生協合計で、組合員総数が2962万人、全体の生協の売り上げを合計しますと3.5兆円超えということになっております」
コープデリグループによる、食品ロス削減の多彩な仕組み作り
環境に関わる取り組みをコープデリグループの『エコ活』と呼び、温室効果ガス、プラスチック、食品ロスの三つを減らしていくための取り組みを進めていると語る山内氏。本日の八重洲塾では、「食品ロスの削減」に焦点を当て、多角的な取り組みを紹介しました。取り組みを通じてSDGs達成を目指すなかで、組合員だけではなく、関係する生産者やフードバンクなどにも、経済的なメリットを提供している点が特徴といえます。
・規格外農産物の供給
「長年産直の取り組みをしてきた中で、生産者の皆様が少々の傷、サイズ違い、色がつかなかったものはなかなか価値が出ないということでお困りでした。こうした問題を解決するため、規格外農産物を販売しております」
・賞味期限の表示の変更
「コープ商品の賞味期限を年月日表示から年月表示にし、納品期限は三分の一ルールを二分の一ルールに伸ばし、廃棄の削減に貢献するという取り組みをしております」
・フードドライブとフードバンク
「まだ使える商品については、様々な手段によってフードバンクなどに提供をしております。お店では、組合員の皆様が組合員の方に呼びかけフードドライブをやり、そこから提供をするという取り組みもあります」
・食品廃棄物の削減
「食品廃棄物の処理について主として行っているのが飼料にすることで、専門の業者に依頼して飼料として活用いただいております。次に多いのがバイオガス発電への活用、(中略)三番目に多いのが生ゴミのリサイクルになります。生ゴミについては、生産者やお店から出た生ゴミを資源循環工場で堆肥にし、それをコープでお付き合いしている生産者の方々に使っていただき、その生産物をコープの店で販売するという循環を作っております」
・週に一度の宅配
「コープの宅配は週に一回、翌週の配達の商品を注文してもらい、それをコープで取りまとめてお取引先へ発注して納品いただき、個人別に集品をしてお届けする仕組みになっております。従って注文の分しか発注しませんので、無駄を減らすことが可能です。(中略)注文いただいたものを仕分けして通い箱で配達します。なるべく効率の良いルートを組み、これで燃料削減もする仕組みになっております」
・宅配アプリの活用
「我々が持っております宅配用のアプリがあり、こちらも活用が可能です。アプリの中に冷蔵庫チェッカーというものがありまして、買い物したものが自動的にデータとして取り込まれる様になっています。注文する際に家に何があるのかということを確認しながら注文することもでき、使ったものを消していけば残っている食品を外出先からも確認でき、計画的な献立作成も可能です。こういったものを使っていただければ二重買いを防ぐことが可能となります」
学習会を通じて、食品ロス削減に向けたアクションを起こす
具体的なアクションへつながるよう取り組んでいる学習会の一例を山内氏は紹介しました。「食品ロスが生じる理由だけを学ぶのではなく、どのように減らせば良いのか、という点を科学の目から組み立て」た取り組みです。
「(学習会では)まずSDGsなどの話しをした上で、食品ロスの知識を伝えています。家庭から出るロスは、過剰に取り去ってしまったもの、食べ残し、期限切れで直接捨ててしまうものがあることを伝え、過剰除去が非常に多いということをご理解いただいた上で、ロスを減らす一つの方法として、包丁で皮を剥いた時とピーラーで剥いたときの違いを比べてもらうといったこともしております」
「子ども向けのSDGsの学習会で食品ロスに言及しました。小学校高学年に向けて夏休みに行った学習会で、(中略)まずクイズとして、日本ではまだ食べられる食品をたくさん捨てていますが、年間日本人はどのくらい捨てているでしょうか?という質問をしています。『年間でおにぎり100個、バナナ170本分、二日に一回バナナを捨てている』と、答えを子どもに伝えるとすごく面白い反応が返ってきます。そしてここで食品ロスについても話をします。年間600万トンありますが、みんなのお家で46%、食品メーカーやスーパー、レストランで54%が、色々な原因によって起きてしまうという話をします。ではどうすれば減らせるのかということについて、子ども達にまず自分で考えてもらい、次にお互いの意見を発言しながらみんなで考える時間もとっています」
「2030年までに食品廃棄物を50%削減(2018年度比)」という目標達成に向けて、制度・仕組み作り、そして啓発活動の両面から積極的に取り組むコープデリグループ。その取り組みとSDGsとの関わりについて、最後に山内氏は次のように語りました。
「最終的に、食品ロスを減らす多くのアイデアがあること、SDGsが色々なことと繋がっていることを理解してもらっています。気候変動の問題なども、食品を作るときにCO2を使い、また、燃やしたり埋めたりする時も出るメタンガスなどの問題が生じるためそれぞれを切り離せません」
講演終了後の質疑応答の時間では、ファシリテーターの納口氏を通じて「農産物の生産まで遡った場合の生協のフードロス対策の有効性」「DXの導入と今後」などについて山内氏への質問が寄せられるなど、興味の高さがうかがえる活発な議論が交わされていました。
八重洲塾の名前の由来
現在は東京駅の東側を指す地名となっている「八重洲」。
この地の名は、江戸時代に通訳として徳川家康に仕えたオランダ人「ヤン・ヨーステン(1556-1623)」の屋敷があったことに由来しています。
ヤン・ヨーステンを生んだオランダは、日本が見習うべき農業大国であり女性の社会参画が積極的な国としても知られており、文化発展の礎となったこの地で「女性の活躍」や「農業」学びを発展させていきたいという想いをこめて『八重洲塾』という名前をつけました。
(主催:株式会社アグリインキュベーター、共催:一般社団法人未来農業創造研究会、協力企業:イオンコンパス株式会社・マイファーム株式会社・イーサポートリンク株式会社)
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