学びと交流を深める!『第40回八重洲塾』開催レポート
テーマは「SDGs:つくる責任 つかう責任」
「素敵な未来農林水産業への、架け橋」を目指す、株式会社アグリインキュベーターが主催する「八重洲塾」では、SDGsの問題解決について最先端で活躍する方々を講師に招き、新しい時代の姿を模索しています。
SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」では、2030年までに小売や消費レベルで、世界全体の1人当たりの食料廃棄を半減させ、生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させることが掲げられています。40回目となる今回は、ワタミ株式会社執行役員 SDGs推進本部長で一般社団法人中部SDGs推進センター副代表を務める百瀬則子氏をお迎えし、「食品リサイクルループ」についてご講演いただきました。
百瀬則子氏 :「『食品リサイクルループは命をつなぐ環』未来の子どもたちのためにSDGs」
SDGsの「12 : つくる責任 つかう責任」では、12.3に「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の1人当たりの食料廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる」、12.5では「廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により廃棄物の発生を大幅に削減する」と明記されています。大きな題目だけを見れば、生産者と消費者の間の課題を解決するという目標にも見えますが、百瀬氏はその内容を見ると「ほとんど廃棄物を出さない、3R(リデュース・リユース・リサイクル)に近いことを述べています」と指摘します。食品ロスを削減するためにサプライチェーン全体でどのように取り組むかが課題となっているなか、百瀬氏がこれまで取り組まれてきた食品廃棄を削減・活用する「環」の構築について紹介いただきました。
日本初の食品リサイクルループ構築
2001年に食品リサイクル法が制定され、再生利用事業計画(食品リサイクルループ)の認定制度が存在したものの、「廃棄物を堆肥や飼料にして農業者に提供できるレベルにできるリサイクラーがいなかったこと、そして、農業者がそういった堆肥や飼料を使いたがらなかったことが大きな課題」だったと百瀬氏は語ります。
「農業団体の方からは、『食べ残しや売れ残りといったゴミみたいなものを私たちの神聖な田畑にまいて、もし土壌が汚染されたら責任を取れますか?』と言われたこともありました。リサイクラー・農林業業者・食品関連事業者の三者が分断していたのです。そこで私は、食品関連事業者の立場(スーパー)として、廃棄物に異物混入がないよう分別し、品質を保持した資源にすることから始めました」
2007年に初めてその認定を受けたのが、当時百瀬氏が環境社会貢献部長を務めていた総合スーパーの運営企業「ユニー」でした。ユニーでは直営売場だけではなく
テナントの排出する廃棄物を全て分別計量しています。そして食品廃棄物の量に応じてテナントには料金を払ってもらい廃棄物を減らす努力を促したり、回収した食品廃棄物を高品質の再生品へと加工できるリサイクラーを選定したり、堆肥や肥料として提供する農業生産者に対して、品質の高い農畜産品を排出者であるユニーが仕入れ販売できるようにする仕組みを構築したことで、食品リサイクルループ認定につながりました。
百瀬氏は、その取り組みの障壁の一つは「市町村をこえた食品廃棄物の移動に関する法律」だったと振り返ります。
「スーパーや外食産業から出る食品廃棄物は一般廃棄物に区分され、市町村内で処理すると法律で決まっています。したがって、ある町にある堆肥をつくるリサイクラーは、その町にあるスーパーから原料となる廃棄物を搬入できても、隣の町から搬入ができないというのが原則でした。(中略)しかし、結果として他の市町村から廃棄物を持ち込む認可を得るために3年間、市役所に23回通いました。(中略)最初に食品リサイクルの仕組みを作れたのは愛知県刈谷市で、ここでリサイクラーの堆肥場が一般廃棄物処理場の資格を取った時、ループは回るようになりました。そして、これを事例として、他の企業やユニーでも何件もループを回すことができました」
これからの食品リサイクルループ構築に立ちはだかる壁
食品リサイクル法では業界別のリサイクル率の目標値が設定されています。令和元年7月12日に公表された新たな基本方針では、2024年度(令和6年度)までの目標が、食品製造業は95%、食品卸売業は75%、食品小売業は60%、外食産業は50%となっていて、目標値からもっとも遠ざかっているのが外食産業だと指摘します。百瀬氏はその理由を2点挙げました。
「①小規模事業者が多く、一か所からの排出量が少量であるため回収が困難であること②料理済みの食品が多く、生鮮食品に比べ堆肥や飼料へのリサイクルがむずかしいということが挙げられます」
少量の食品廃棄物をどう回収して、リサイクラーへ運搬するかという課題に対して、外食産業全体で解決しようとする取り組みを百瀬氏は紹介しました。
「2020年7月、名古屋市で外食産業5社37店舗で一緒に廃棄物を集めてリサイクラーに持っていき、できた飼料を使って鶏を育て、生まれた卵をみんなで買おうというリサイクルループを作り、国から認定を受けました。(中略)現在は群馬県でもループの構築の申請を出していて、新潟や京都でも今後進めていく予定です」食品廃棄を削減し、また食品リサイクルループの構築を広げるためには、法律の緩和や異業種間での協業が重要だと語ります。
「日本では、まだ十分に食べられる製品を地域社会に寄贈することが拡大生産者責任によって躊躇されてしまいます。会社側に非はなくても、渡した後に寄付した食料によって消費者が体調をくずした場合、会社側の責任になってしまうからです。したがって、外食産業や小売業の食品工場で出荷できなかった生鮮食品や加工食品を子ども食堂や貧困家庭などに寄贈するための規範が必要です。これからは、小売外食、メーカーや卸も、食品ロスをできるだけなくし、食料を必要とする人に食べてもらうということを進めるために、法律改正や受け取る側の衛生管理を含めて検討していくべきだと思います」
また、消費者への啓発も重要だと百瀬氏は説きます。
「リサイクルループの最終製品を手に取る消費者に、この牛乳がリサイクルされた飼料を利用していることや、通常よりも温室効果ガス削減に貢献すると訴えながら販売することも大切だと考えます。(中略)食品ロスを一番出しているのは一般家庭や、外食先での食べ残しです。よって、消費者にいかに食品ロスについて知ってもらい、それを減らす努力をしてもらうか、がこれからの課題だと思っています。例として、消費期限と賞味期限の違いをしっかり知ってもらうことが必要です。(中略)外食産業においては、『おいしい食べキリ』というのを普及させていきたいところです」
食品廃棄物のリサイクルは「100年後の子どもたちのために」
最後に百瀬氏は「100年後の子どもたちのために」と、次のように述べました。
「食品ロスを減らすこと、食品廃棄物をリサイクルする目的は何なのでしょうか。それは、私たちの孫やその先の未来の子どもたちが飢えに苦しまず、自然のなかで幸せに暮らせるような持続可能な社会をつくりあげるためです。このために、食品関連事業者も一般消費者もみんなで協力して取り組んでいけたらと思います」
八重洲塾の名前の由来
現在は東京駅の東側を指す地名となっている「八重洲」。
この地の名は、江戸時代に通訳として徳川家康に仕えたオランダ人「ヤン・ヨーステン(1556-1623)」の屋敷があったことに由来しています。
ヤン・ヨーステンを生んだオランダは、日本が見習うべき農業大国であり女性の社会参画が積極的な国としても知られており、文化発展の礎となったこの地で「女性の活躍」や「農業」学びを発展させていきたいという想いをこめて『八重洲塾』という名前をつけました。
(主催:株式会社アグリインキュベーター、共催:一般社団法人未来農業創造研究会、協力企業:イオンコンパス株式会社・マイファーム株式会社・イーサポートリンク株式会社)
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