学びと交流を深める!『第36回八重洲塾』開催レポート
テーマは「SDGs:オランダ農業に学ぶ」
「素敵な未来農林水産業への、架け橋」を目指す、株式会社アグリインキュベーターが主催する「八重洲塾」では、農業の未来を担う最先端で活躍する方々を講師に招き、新しい農業の姿を模索しています。
第34回・35回・36回の3回にわたり「オランダ農業に学ぶ」をテーマに、現地オランダよりリモートで開催します。36回目となる今回は、Japan Euro Promotions代表の後藤猛氏をお招きし「縄文の心、オランダから学ぶこれからの農業ビジネス」と題して講演いただきました。
後藤猛氏 :「縄文の心、オランダから学ぶこれからの農業ビジネス」
大学卒業と共に世界中を旅をし、最終的にオランダに辿り着き、以来50年にわたってオランダに在住し、ヨーロッパと日本を舞台にビジネス・コーディネーション活動を行う後藤氏の講演は、駐日オランダ大使館農務参事官の話として、「施設園芸」「馬鈴薯」「酪農」におけるオランダ農業のイノベーション事例の紹介から始まりました。
オランダは世界でも有数の農産物輸出国で農産物輸出額はアメリカに次いで第2位を誇ります。一方、日本は40位以下。人口は約1700万人、国土面積は日本の約9分の1なのにも関わらず、農業をはじめ各分野での高い生産性をあげている秘訣として、行政機関のスタンスがあると後藤氏は指摘します。
「この理由は教育や経営者と従業員の心、国、行政の支援にあります。教育によって身につくのは自己の能力に自信を持つこと、そしてコミュニケーション能力です。そして教育の中で重要なのが褒めるということで、人を褒める、感謝の気持ち、夢を持つ、こういった感性を育てることが非常に重要です。オランダは女性の社会参加も非常に進んでいますが、これは時間、場所及び労働の内容によって実現されています。労働する時間、場所、内容が従業員と経営者で話して決められる、それをサポートするのが行政です。要するに行政は監督機関ではなく市民のサービス機関であり、弱者を助け、ベストな企業を支援しているのです。ですから日本は根本的な価値観の変化が必要だと思います。」
オランダの農業をリードする先駆者・団体の取り組み
続いて後藤氏が紹介したのは、先進的なオランダ農業の担い手たち。
全農地の15%を有機にするという目標を掲げて、インターネットを通じて会費制の会員を募ったという、農業未経験で農家の世界に飛び込んだフランク・レメリー氏。そのアイデアは見事に成功し、1年目で1万人以上の会員を獲得。会費は日本円にして2500円で寄せられた金額は2億5千万円にものぼり、53ヘクタールの土地を購入した彼は、有機農業をしたい人に土地を貸し付けて支援するという事業モデルで事業を拡大し、現在では約2倍の土地を購入しているといいます。
オランダ国内で最高のトマトを作ると称される、有機施設園芸の「王様」、フランク・デ・コーニング氏は、慣行農業よりも経費が30%、人件費が20%高くかかるといわれる有機農業の問題を「土壌と作物とのコミュニケーション」を駆使して乗り切っているといいます。作物のデータをコンピューターで入力したうえで、温室の道端に植えたナスの葉っぱを観察し、土壌の水分状態や栄養状態を感覚として把握して、組み合わせていくという方法で、長年努力を重ね、現在では年間12億円の売り上げ規模にまで成長しているといいます。
そして、オランダの複数のNPOが立ち上げた「キクイモ財団」の事例を次のように語りました。
「彼らの目標はなんと、200haのオランダの空いている土地や慣行農業を行なっている土地を総額180億円で買って、有機農業にしようという壮大なものです。この理念を打ち出し社債券を発行したところ、1億3000万円が販売されました。半年で他の221の団体も加盟して、700名の買った社債券が10億円近くなりました。(中略)農地のオーナーは国や投資家ですから、それを管理する地域土地管理財団が必ずあります。キクイモ財団では四つの財団が革新的なイニシアチブを取っています。地球環境と生物多様性の回復につながる有機農業、経済支援、社会との絆、この三本柱がなければ地球の回復はありません。適正農法、地球愛、消費者中心な経営方法、農家、行政、学校、消費者、その団結力、総合力が非常に重要です。どれか一つの団体だけが尽力するだけでは不十分ですが、団結力が生まれれば1+1は2ではなく10にも20にもなる、ということです。」
日本は農産物輸出大国を目指すべき!
最後に後藤氏は、今後急速な拡大が予想されている有機農業市場に触れ、日本の「農産物の輸出大国化」という展望を語りました。
「世界でナンバーワンの農業立地国、このことをもう一度皆さんで考え直そうではないですか。それでこそやはり農業、農産物の輸出大国になれるはずです。農水省によると、世界の市場規模、特にアジアは相当なスピードで2030年まで伸びていきます。この伸びた消費量は、日本が賄っていくべきだと思います。(中略)自然の力こそ、農業の力です。農業というとカッコ悪いと思われますが、オランダではセクシーな農業といわれており、日本ではかっこいい農業を目指していくべきだと思います。(中略)有機農業の市場は、4年後には50%増加します。これを賄うことができる可能性があるのは日本だと思います。農業の人こそ、自信を持ってやるべきだと思いますし、我々もできるだけの協力をします。」
八重洲塾の名前の由来
現在は東京駅の東側を指す地名となっている「八重洲」。
この地の名は、江戸時代に通訳として徳川家康に仕えたオランダ人「ヤン・ヨーステン(1556-1623)」の屋敷があったことに由来しています。
ヤン・ヨーステンを生んだオランダは、日本が見習うべき農業大国であり女性の社会参画が積極的な国としても知られており、文化発展の礎となったこの地で「女性の活躍」や「農業」学びを発展させていきたいという想いをこめて『八重洲塾』という名前をつけました。
(主催:株式会社アグリインキュベーター、共催:一般社団法人未来農業創造研究会、協力企業:イオンコンパス株式会社・マイファーム株式会社・イーサポートリンク株式会社)
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