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会議室スタッフ通信|学びと交流を深める!『第32回八重洲塾』開催レポート

学びと交流を深める!『第32回八重洲塾』開催レポート


学びと交流を深める!『第32回八重洲塾』開催レポート

テーマは「SDGs:気候変動と農業」

「素敵な未来農林水産業への、架け橋」を目指す、株式会社アグリインキュベーターが主催する「八重洲塾」では、農業の未来を担う最先端で活躍する方々を講師に招き、新しい農業の姿を模索しています。32回目となる今回は、国立環境研究所 気候変動適応センターの増冨祐司氏、Three little birds 合同会社 共同代表の齊藤超(さいとうこゆる)氏、千葉県佐倉市で有機農業を営む「結び合い農園」の丹上徹氏の3名を招いて、「気候変動の下での持続可能な農業の推進について」をテーマに、10月30日に行われました。今回は感染防止対策のためにオンライン配信による開催となりました。


増冨祐司氏 :「気候変動が農業生産に及ぼす影響と適応策」

学びと交流を深める!『第39回八重洲塾』開催レポート

30回の八重洲塾に続いて、2回目の登壇となった増冨氏からは前回と同じ「気候変動が農業生産に及ぼす影響と適応策」をテーマに、「研究や農業への影響」についてお話いただきました。温暖化の現状について前回のおさらいをしたのち、増冨氏が研究を行っている「白未熟粒発生率予測モデル」について解説されました。 「白未熟粒(しろみじゅくりゅう)」とは、高温によって発生する登熟不良で、デンプンが十分に充密しなかったために空洞が生じ、光に当てると白く見える粒で別名を「シラタ」ともいいます。この発生率が高くなると生産した米の等級が下がり、価格も下がるため米農家にとっては大きな問題となります。増冨氏の研究による予測モデルを用いると、米の品種と気温を当てはめると白未熟粒の発生率を推計できるのです。

「過去10年の白未熟粒発生率は平均的に低く、問題にはなりませんでしたが、2040年代になると、九州・西日本の平野部ではほとんどが2等になるという結果が予測されました。衝撃的だったのが新潟で、新潟の平野のあたりでも温室効果ガス排出最悪のシナリオで等級が2等になってしまうと予測されました。新潟のような北の地域でもそれほど遠くない将来にお米の等級が2等に下がってしまうことを、研究で示せたかと思います。温室効果ガスが一番多くなるシナリオでは、年間400億円くらいの被害が出ますので、これよりも低いコストで影響を抑えられれば、いい対策になるわけです」

高温に強い品種を見つけて開発(育種)するには最低でも10年はかかるうえに、おいしさはできるまで分からず市場に受け入れられるかも未知数です。対策のポイントとなるのは、いつまでにどこで何をするべきか。それを指し示す情報についても増富氏の研究が生かされています。

「茨城県の例では、2020年代まではコシヒカリで大丈夫だということが分かりました。しかしそのまま進むとかなり白未熟粒が増え、現状を維持しようと思うと2030年代までに1℃くらい強い品種を入れないと現状維持できないことも分かりました。さらに2040年代に行くと1.5℃くらい強い品種を入れることで現在と同じ状況になると予測できます。この結果を見ると10年で0.5℃くらいずつ強いお米を作らないと影響が出てくるということが分かるのです」

現在進行中の研究では、より細かなエリア単位での「白未熟粒発生率予測」を行っていることを紹介しました。圃場(田んぼ)単位で環境を調べると、気温が同じであれば、その地域の白未熟粒の発生率はどの田んぼも同じと考えらますが、結果を今調べているところとのことです。

「予想と違うことが出ると楽しいと思っています。そしてこのような異なる圃場の状況を調べて比較することで、何かうまい栽培方法を見つけられないかということを今研究しています」

最後に増冨氏は、追跡調査によって結論が出たらまた八重洲塾でお話ししたいと、さらなる研究への意気込みを語りました。


齊藤超氏 :「ソーラーシェアリング×有機農業によるエコな地域づくり」

学びと交流を深める!『第43回八重洲塾』開催レポート

千葉県匝瑳市でソーラーシェアリングの農業部門法人「Three little birds」を、2016年に立ち上げた齊藤氏からは、ソーラーシェアリング事業への参加したきっかけやその利点についてお話いただきました。

ソーラーシェアリングとは、「営農しながら同じ場所で太陽光発電も行う」取り組みのこと。一般的な太陽光発電施設が森林を伐採して土地を開き、そこに太陽光パネルなどの発電施設を設置するのに対して、パネルを蛇腹状に設置してパネルだけではなく地面にも太陽光が当たるようにして、農業生産と太陽光発電を同時に行うのが特長です。そのメリットを齊藤氏は分かりやすく解説してくれました。

「ソーラーシェアリングは設置時に、野立てのメガソーラーのように森林を伐採したりしないので、二次災害に繋がるようなことはありません。森林を伐採せずに農業をやるので、CO₂の固定作用が継続しますし、耕作放棄地を畑に復活させるという効果もあります。また、発電所には常に人がいるので、停電時には地域の防災拠点となりますし、観光資源としても活用できます」

匝瑳市のソーラーシェアリングでは売電収入を、農業法人には耕作協力金として、また、地域協議会には地域作りの協賛金として分配しているため、地域内で利益が循環するという点もポイントだといいます。農業と地域との取り組みが評価され、2019年には「未来につながる持続可能な農業推進コンクール」で関東農政局長賞を受賞するなど、注目も高まっています。

また齊藤氏は、今後の展望として「農機具メーカーによる、機械の電動化や小型化が進めば、太陽光で発電した電気を使って農業ができるようになり、完全にCO₂ゼロで農業ができるようになる」という期待とともに、次のように抱負を語りました。

「ソーラーシェアリングで収入のバックアップ、CO₂削減への貢献など、様々な意味でこの匝瑳モデルのような地域循環型のソーラーシェアリングが日本各地に拡まることを願っています。売電収入があることで地域づくりもできますし、匝瑳モデルのように仕組み化すれば地域一体となって、農村を再生していくことができます。先行事例として良いモデルになれるように頑張っていきます」


丹上徹氏 :「私の温室効果ガス削減~行動と発信で経営にも活かす~」

学びと交流を深める!『第43回八重洲塾』開催レポート

夫婦二人で、少量多品目の野菜を、無農薬有機肥料で生産する丹上氏が温室効果ガスへの取り組みを始めたきっかけは、ラジオ番組だったといいます。温暖化の進行によって農業ばかりではなく、経済、文化などあらゆるところへ影響を及ぼしかねないという危機感から「結び合い農園」で行っている、温室効果ガス削減方法について紹介いただきました。

①再生可能エネルギーへの電力切り替え

電力自由化に伴って、電力事業者を選択できるようになり個人でも「再生可能エネルギー」を選択できるようになりました。丹上氏は「大手の電力会社と料金がそれほど変わらず、農業は特にコストの面でも電力にそこまで依存していないので、切り替えした方がいいんじゃないかなと思います」と語ります。 ②竹炭の農地への利用

植物が光合成によって固定した炭素を炭焼きすることによって、結果的に大気中のCO2を削減することになる。このCO2削減の手法が有効であることが、国連の研究機関に認められています。 農家にとっては邪魔な植物とされることの多い「竹」を炭にして、農地へ土地改良剤として散布するとさまざまなメリットがあるといわれています。炭にある無数の微細な穴が微生物のすみかになったり、動物性堆肥の臭いを抑制したり、田んぼの水の濁りをとったり、穴に窒素分が吸着され肥料の窒素の効果が緩やかになること、さらには農業被害を与えるイノシシのすみかとなる竹林が減ることを、丹上氏は挙げます。

続いて「竹炭づくりを普及させるための方策」として以下の点をあげ、個々人の頑張りよりも皆がやりたくなるような仕組みづくりが必要と述べました。 ・竹炭を使って作った農作物のエコブランド化

・行政のサポート(竹炭作りはCO2削減と地域の竹害緩和などの公益になるため)

・竹炭作りをボランティア活動の定番として位置づける(社会貢献に意欲のあるシニ ア世代の方々などボランティアの力を借りる)

③食廃油の回収とバイオディーゼル(BDF)の利用…温室効果ガス削減のため地域の取引のある飲食店から食廃油を回収したり、その食廃油から作られるBDFをトラクターやトラックの燃料として利用する

④地産地消で「知産知消」の経営…対面販売によって知り合いを増やし、協力関係を多方面に構築する 地産地消ならば輸送で発生するCO2を削減できる

⑤薪ストーブの導入…販売する焼き芋の調理や自宅の暖房でガスを使わずに薪ストーブを活用

実際に手がけられている方法を紹介したうえで、丹上氏は「1人でやっても意味がなく、みんながやりたくなるような方向に持っていかないといけない」と述べ、SNSでの発信によって、応援してもらえる農園になること、農園で働きたい人のモデルとなること、そして農業だけ行っているときには見いだせなかった新たな出会いや方向性を得られることを期待していると語りました。最後にSDGsにも触れ、次のように締めくくりました。

「温室効果ガスの削減は、気候変動だけでなく他のゴール到達にも強く影響する一番の方法だと思っています。農業分野でも緩和と適応とありますが、適応だけしていても17の目標には届かないと思います。緩和を一生懸命やることが、持続可能な社会実現の方法だと思います」

学びと交流を深める!『第43回八重洲塾』開催レポート


八重洲塾の名前の由来

現在は東京駅の東側を指す地名となっている「八重洲」。
この地の名は、江戸時代に通訳として徳川家康に仕えたオランダ人「ヤン・ヨーステン(1556-1623)」の屋敷があったことに由来しています。

ヤン・ヨーステンを生んだオランダは、日本が見習うべき農業大国であり女性の社会参画が積極的な国としても知られており、文化発展の礎となったこの地で「女性の活躍」や「農業」学びを発展させていきたいという想いをこめて『八重洲塾』という名前をつけました。

(主催:株式会社アグリインキュベーター、共催:一般社団法人未来農業創造研究会、協力企業:イオンコンパス株式会社・マイファーム株式会社・イーサポートリンク株式会社)


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