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会議室スタッフ通信|学びと交流を深める!『第21回八重洲塾』開催レポート

学びと交流を深める!『第22回八重洲塾』開催レポート


学びと交流を深める!『第32回八重洲塾』開催レポート

技術革新が進み、目まぐるしく変化する世の中で、既存の価値観が大きな転換を迫られています。これからの未来は瑞々しい価値観を持った人たちと次代の若者が担ってゆくでしょう。「未来農業への懸け橋」を事業コンセプトに掲げる株式会社アグリインキュベーターが主催する八重洲塾では、食や農業の分野において、SDGsの各項目のゴールとどのように関わり、貢献できるかをSDGsの専門家を招いて学び考えていきます。

(共催:一般社団法人未来農業創造研究会 協力企業:イオンコンパス株式会社・マイファーム株式会社)


テーマは「SDGs:2020年 食と農の関わり」

SDGsは地球環境や経済活動、人々の暮らしを持続可能とするためにすべての国が2030年までに取り組む行動計画で、気候変動対策など17の目標からなっています。 21回目となる今回は、東京オリンピック・パラリンピック推進本部の勝野美江氏、ジャーナリストの崎田裕子氏を招いて、2020年東京大会に関わる食や農業の分野等とSDGsの各項目のゴールとにどのように関わりがあり、日本の社会に影響するかを学び共に考えていきます。


崎田裕子氏:「世界と日本のフードロスへの取り組み事情」

環境・エネルギー分野にかかわるフリーランスのジャーナリスト・崎田裕子氏。「NPO法人持続可能な社会をつくる元気ネット」の理事長も務めている同氏は、2020年東京オリンピック開催が決定した2014年にEUのサーキュラーエコノミーなどを視察。持続可能性を意識した大会として評価が高かった2012年のロンドンオリンピックのキーパーソンに話を聞きます。その経験を元にして、オリンピックを機に、日本の社会システムの変革というチャレンジへと挑んでいるといいます。

「オリンピック・パラリンピックに関わった民間の企業やシンクタンクの方々は、このオリンピックをきっかけに、これまでロンドンで開発できていなかったところを新しく開発し、食の調達など、いろいろな社会システムを新しくするチャレンジをすることを明確に意図し、皆で計画を策定し、持続可能なスポーツイベントのマネジメントシステムとしてISO20121をつくりました。それを基にしながらマネジメントを進めたという大会の全体像を知り、今度の2020年東京五輪でも、日本の社会システムをいかに変えていくか、新しいチャレンジをする大きなきっかけなるときなんだということを強く感じました」

続いて、世界の状況、国内状況について詳細に解説したあと、ロンドンオリンピックでの反省を踏まえて2020年東京オリンピックに向けての、全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会の取り組みおよびそのメリットを紹介しました。

「食べきり運動のメリットは何ですか?という話は必ず出てきます。『廃棄物は量ではなく1年間の回数で契約しているからロスが減っても変わらないです』という事業者も大変多いです。

その中で、福井県でロスを減らす取り組みをしている店を何件か細かく取材したところ、宴会の受付時などにお客様の人数構成や食事の好みなどを聞き、ぴったりの物を出すような努力をしていました。お客様とのコミュニケーションをとりうまくいけば常連客がつくという、結局はお店の熱意が経営強化につながるということが分かりました」

「三重県の大きな旅館では、1日に300kgの生ゴミが出ていたところ、食事をビュッフェ形式にしたことで100kgまで抑えたそうです。それでも出た廃棄は周囲の野菜栽培のたい肥にしたり、イセエビの殻を養殖のエサにして真鯛を育てるなど、循環のための取り組みを行なっています」

最後に、2020年東京オリンピックでの「SDGsの実現」という目標について、抱負を語りました。

「東京オリンピック・パラリンピック2020では、SDGsの実現に貢献するということを大目標に掲げて、持続可能性をコンセプトに広報しています。例えば、メダルを再生金属でつくるための携帯電話回収などがあります。食品ロスに関しても目標がしっかりと出ていて、実施のほうは勝野さんが動いてくださっていますが、事業者がやれること、提供時にできること、意識啓発をやっていこうと考えています。(中略)全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会では、自治体・事業者・消費者と連携しながら取り組み、政府各省や商工会議所に応援していただけるような場にすることを目指して活動しています。ロンドン大会の後には、大会時に作ったフードビジョンを活用し、フードビジョンネットワークができる運動がありました。日本でも、多くのチャレンジが五輪後の次の社会に波紋を残していくような取り組みができればと思っています」


勝野美江氏:「国際的なスポーツイベントと食・農の関わり」

学びと交流を深める!『第43回八重洲塾』開催レポート

農水省から出向し、内閣官房東京オリンピック・パラリンピック推進本部事務局として食と持続可能性とホストタウンに関する仕事を担当する勝野氏。選手村で提供される食事など、食品だけに限らず、組織委員会が準備するすべてのものには調達基準が設けられて、選手にサスティナブルなものを供給するというSDGsの観点から、さまざまな要件があります。

農産物:「①食品安全、②環境配慮、③作業者の労働安全」

畜産物:「農業とほぼ同じですが、アニマルウェルフェアというルールが入ります」

水産物:「生態系の保全がルールに入ります(中略)MEL、MSC、AEL、ASCの認証が位置付けられています」

これらをクリアしながら食事を提供するのが、来年に開催される東京オリンピックでの課題だと語ります。

「これら3つの認証・基準をクリアしたものを1年後に選手食堂で提供しないといけません。組織委員会は、飲食提供に関する戦略を立てています。オリンピックで1万8200人、パラリンピックで8000人が食堂で食事をしますが、調達基準を満たしたもので、かつ、文化を尊重した食事を、食中毒などの問題に配慮しながら膨大な量をどう賄うかということが課題です」

次いで、都道府県の取り組み、企業の取り組みについて触れたあと、ホストタウンでのおもてなしの展開について、そして「世界初」の試みについて解説しました。

「オリンピックでは207の国地域、パラリンピックでは170ほどの国地域の方々が協議に参加するために日本にやってきます。ホストタウンは、大会参加者とおもてなしをする自治体をマッチングし、交流してもらうための取り組みです。(中略)ホストタウンでは、大会前後に、選手をそれぞれの自治体にお迎えし、『自治体と、2020年東京大会に参加する国・地域の住民等が、スポーツ、文化、経済などを通じて交流し、地域の活性化等に活かしていく』『大会前後に選手をそれぞれの自治体に招待し、地域の人や文化人などとお互いを知り合う』という世界初の試みをしています。現在では北海道から沖縄まで、全国の自治体で413の地域がホストタウンになっており、相手国も130を超えました」

「例えば、台湾ウエイトリフティングのホストタウン北海道士別市では地元産のGAP食材を使い、公認スポーツ栄養士が考案した、ウエイトリフティング選手向けのメニューを提供しました。また、鹿児島県鹿屋市では、タイ女子バレーボール選手に、地元の高校生が開発した鹿児島GAP取得かぼちゃプリン抹茶ムース添えを提供し、食べてもらいました。ドイツのホストタウン岩手県雫石町では、ドイツ人の料理人を迎えて、地元産のGAP食材を使った料理教室を開催しています。これらは選手村ではできない、ホストタウンでこその交流かと思います」

「2020年の大会時には、さまざまな国の応援団が日本各地の地域にあるという状態にしたい」と語る勝野氏。最後に、SDGsに関連する「食品ロス」についての取り組みについても次のように述べました。

「SDGsの話もありますので、食材を余すことなく使う、旬のものをつかう、適量を提供するということにも配慮して取り組みを進めていきたいと思っています。需要予測をすること、タイミングよく提供すること、食べ残しを減らすことが大切です。ただし、試合に勝ちに来ている選手村食堂での提供で難しいことは「食べ残しを減らす」こと。ソフトな情報提供により食べ残しを減らせるよう、知恵をしぼりたいと思います」

講演後の質疑応答の時間では、参加者からは「ロスを減らす取り組みについて」「国際的スポーツ大会に出荷する生産者のメリット」「消費者ができることについて」などの質問が寄せられ、今回の講演テーマに対する関心の高さが伝わってきました。


金子雄氏:高校における地域と連携した地域振興の取り組み

伊豆大島で唯一の公立高校・都立大島高校で教諭をしている金子氏。株式会社すかいらーくへ入社後、さまざまな「大量生産・大量消費」に社会問題に直面し、農業や食糧のことを勉強し直すため東京農工大へ入学。卒業後、都立高校の教員として採用され、都立農産高校へ着任。2011年から大島高校に赴任。現在は主幹教諭・農場長として、学校内にある椿園で生産される椿を活用して、地域の農業・畜産・観光に役立てる取り組みを行っています。

今年3月に行われた「大地の力コンペ 2019」で、大島高校の取り組みは準グランプリを獲得。そのときに「大地と海の恵みを活かして ~島のミライのために~」という題で発表された、「肥料要求度が高いレモン栽培に、ツバキ油を搾った際に出る油糟を活用」「椿油や油粕を使って鶏を育て、カビリアチキンとして伊豆大島ならではの付加価値をつけた鶏卵や、鶏肉の生産を目指す」「椿の果実を食害する台湾リスを防除することで、椿の収穫量を増やす取り組み」を、大島高校の生徒が紹介しました。

さらに、「大地の力コンペ 2019」発表後の取り組みについて、またまだコンペでは発表していなかった話題についても、金子氏は語りました。

「ジオパーク:伊豆大島にはジオパークというものがあります。ジオパークというのは地球規模の活動を楽しめる、大地の公園という意味なんですが、大地だけでなく、人々の暮らしもというところで、椿とのかかわりが非常に深いので、私と川島さんと、もう一人生徒がジオガイドの資格をとったりして、ジオパークと連携しながら地域を盛り上げていけたらと思っています」

「椿炭:椿もわさび同様、捨てるところがないいろんな利用ができる植物。燃やした後も炭にしたり、灰にしたり。灰の方も陶芸なんかに使っていただいて、いい色がでるそうです」

「島唐辛子の活用:島唐辛子は沖縄を思い浮かべるかもしれないが、伊豆諸島でも島唐辛子を行っていて、大地の力コンペのメイドイン東京の会と連携していこうということで、これを機に何か新しい特産品を作れればというところです」

「オオシマザクラの活用:大島は椿とオオシマザクラが有名です。オオシマザクラも何か使えないかということで小川香料という会社で、何か新しい特産品を作れないかとやっているところです」

最後に、今後の取り組みそして、地域貢献についての思いを、金子氏は語りました。

「地域貢献を通じて生徒を成長させていきたい。また、学校が地域の活力になるようになっていきたいと思います。そして、これが私として一番大きな原動力なのですが、大島高校で学びたい、農林科で学びたいという生徒を一人でも増やしたいというところです。(中略)魅力ある学校にしていけば、大島高校で勉強したいという子が来てくれるんじゃないかなと思ってやっております。進学するにしろ、就職するにしろ、学んだことを活かして希望ある進路に進んでいただきたい。持続可能な地域づくりに貢献していければということを思っているところです」

パネルディスカッション・質疑応答の時間では、西辻氏をファシリテーターに、塩谷氏、金子氏、そして大島高校の生徒2名が参加。それぞれの取り組みに対する活発な議論が交わされたほか、高校生の2人に「これから実行したいビジネスプラン」ついての質問が寄せられました。その質問に対し、「高校生だからこそできる活動に取り組みたい」と回答。農業と地域との未来について、多くのヒントを感じられた一日になりました。


八重洲塾の名前の由来

現在は東京駅の東側を指す地名となっている「八重洲」。
この地の名は、江戸時代に通訳として徳川家康に仕えたオランダ人「ヤン・ヨーステン(1556-1623)」の屋敷があったことに由来しています。

ヤン・ヨーステンを生んだオランダは、日本が見習うべき農業大国であり女性の社会参画が積極的な国としても知られており、文化発展の礎となったこの地で「女性の活躍」や「農業」学びを発展させていきたいという想いをこめて『八重洲塾』という名前をつけました。

(主催:株式会社アグリインキュベーター、共催:一般社団法人未来農業創造研究会、協力企業:イオンコンパス株式会社・マイファーム株式会社・イーサポートリンク株式会社)


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